古書と人生

2022年09月26日

第21回「「業界紙諸君!」を読む」

私は職業として新聞記者をやっています。
ただ、朝日新聞や読売新聞といった全国紙、北海道新聞などのブロック紙とは違い、専門的な分野を扱う「業界紙」の記者という点では物珍しさがあるかもしれません。
業界紙といっても分野は 1つだけではありません。
その業界の数だけ業界紙の数もあります。
今回はそういった業界紙に焦点を当てた「業界紙諸君!」(佐野眞一、ちくま文庫、2000年)を紹介したいと思います。









様々な種類がある業界紙

私は本業でも、業界紙の記者、副業でも業界紙の記者として記事を書いています。
先ほども述べましたが、業界紙にはたくさんの種類があります。
例えば、農業です。1番日本で有名な農業の業界紙といえば「日本農業新聞」です。
日本農業新聞はその名の通り、農業のことを幅広く扱っていて、私も時々目を通しています。
日本全国に支社があって、その地域ならではの話題を提供しています。
また、建設や鉄鋼業などを取り扱う新聞もあります。
前者で有名なのは「日刊建設工業新聞」、後者は「鉄鋼新聞」などが有名です。
エネルギーを扱った「ガスエネルギー新聞」、水産業を扱う「水産新聞」、住宅や不動産を扱う「週刊住宅タイムズ」といった新聞も存在します。




マイナーな分野でも大丈夫

「業界紙諸君!」の中で 1つ、面白い新聞があったのでご紹介します。
その名は「蒟蒻新聞」です。
こんにゃくというまたマイナーな分野を新聞にしたものです。
その勇気にまず感服してしまいます。
本書によると、蒟蒻新聞は 1948年に創刊されました。
タブロイド版の 6ページ建てで、毎月 5日発行。発行部数は 2,000部だったといいます。
蒟蒻新聞の詳しいことやエピソードについては、色々な方が文章にされていると思いますので、そちらをご覧いただくとしましょう。
今回の記事では割愛します。気になった方は調べてみてはいかがでしょうか。
業界紙はこのような「マイナーすぎる!!」と思うような分野まで扱います。
これが業界紙の醍醐味であり、楽しめる部分だと思います。




厳しい業界事情と試読のススメ

新聞業界は紙媒体を主としてやってきたので、少しずつ購読部数は減少していくと思われます。
若者があまり新聞を読まないとの報道は度々なされています。
ニュースを確認するといってもスマートフォンでニュースを見ることはあるでしょうが、新聞をわざわざ購読、購入してペラペラめくって見るということはもうしないと思われます。
ですが、新聞には新聞なりの面白みがあります。1つ挙げると、1ページで情報を全て見ることができるという点です。
スマートフォンだといちいちスクロールしなければ記事を先へ先へと読み進められません。
これが紙の新聞であれば、その面を開いたまま記事を読み進めることができるので、そういった煩わしいことがないというメリットがあります。
ところが、スマートフォンで見るニュースはお金がかかりません。一部有料記事等、制限がかかっているものはありますが、基本的に全て無料でニュースを閲覧できます。
人は無料という言葉に弱いものです。こればかりは仕方ありませんね。
業界紙は全国紙と違って、その分野なりの面白さを深掘りしている新聞でもあります。
もしこの記事を読んで業界に興味を持ったそこのあなた。一度、業界紙の試読をしてみてはいかがでしょうか。
私は何回も業界紙の試読をしたことがあります。それだけでもその業界について知ることができ、大変勉強になりましたね。検討してみてはいかがでしょうか。




最後に

以上、「業界紙諸君!」、そして業界紙についてさらっと触れてきました。
本書にはこのほかにも様々な業界紙の紹介があります。
今もその業界紙が発行されているかどうかは分かりませんが、とてもディープな新聞を扱った、
さらにディープな文庫でありますので、気になった方は手に取ってみてはいかがでしょうか。
もう 10月も間近で、本格的な秋を迎えます。
より良い読書の秋を過ごせればいいなと思っています。それでは。



posted by 小林英介 at 11:00 | 第1回〜第25回