ウェブメディアが台頭し、人間は皆スマホを持ち、どこでも画面に集中する毎日を送っています。
私も紙媒体でいくつか書いていますが、その編集者さんが口にする言葉は「苦しい」。
経営が苦しいとか、紙媒体の置かれている環境が苦しいとかいうことだと私は推察します。
今回紹介するのはそんな雑誌について扱った、能町みね子さんの「雑誌の人格」(文化出版局、2013年)です。
雑誌について
表紙から何かサブカル感を醸し出すこの本は、雑誌について様々な観点から紹介されています。
雑誌については、この 2010年代初頭はまだまだ存在感を放っていたでしょう。
私も沢山の雑誌を読んでいますが、切り口がよくわからない雑誌にも、時々遭遇します。
この雑誌では、一体何を伝えたいのかよくわからない。
この記事は何をどうしたいのかわからない。
そのような困惑を生み出すような記事が一部あるのも事実だと思います。
雑誌と種類
本書では見た目だけでは分からないような雑誌の内面もチラ見せしながら、その雑誌を人に例え、その人となりを紹介していくといったスタンスになっています。
まず、その時点で切り口が面白いと思います。
雑誌を人に例えてそれを事細かに解説するのは簡単そうに見えて難しいことだと思います。
それを連載の中でささっと書いてしまう能町さんは本当に凄い人だと心の底から思っています。
雑誌には一つ一つ大きな魅力があります。
グラビアを大きく扱って興味関心をそそる雑誌や、そういった写真はあまり載せず文字を中心とした評論を展開する評論誌、アーティストなどを多く掲載している音楽系の雑誌。
このように、雑誌には様々なジャンルやタイプがあります。
雑誌と性格
「雑誌の人格」は人の性格といった面で雑誌を扱い、それを紹介することにより、雑誌を分析していったのだろうと思います。
また、「雑誌」と「人格」という共通点を様々な方向から検討して行った結果、いろいろな要素が一点で合わさり、それを人格として扱うことで少し雑誌に対して違った視点からアプローチすることが面白い視点なのだと考えたのだろうと思っています。
様々なものの中から共通点を見つけ出し、それをいろいろな形でアプローチしながら最終的には 1つのものに帰着させる。
このような着眼点は、文章構成の一つとして挙げられるものです。
主に評論文と呼ばれるものの中で、比較的長い評論文の中で用いる文章構成です。
能町さんがそれを考え、連載の中で用いていたのかどうかは分かりませんが、私は同じ匂いを感じました。
能町さんは男性として生まれ、今は女性として生活しています。実は、小さい頃の私は「女性になりたい」と思っていたこと(現在はありません)があり、能町さんは憧れの存在だったのです。
エッセイスト、コラムニストとして現在も活躍している能町さんは、私が好きな作家さんの一人でもあります。
本書は何度も読んだことがあったのですが、古本屋に行ってみたら売っており、衝動買いしてしまったのでした。
最後に
今回は能町みね子さんの「私の人格」を紹介しました。
出版業界は大変苦しい時代となっていますが、雑誌は雑誌でまたそれは面白いものがあります。
何より雑誌や紙媒体は手元に残るのが1番のメリットでしょう。
ウェブは記録がすぐ消えてしまいますし、紙媒体はウェブとは違う味を引き出してくれる存在です。
私も紙媒体で執筆を始めましたが、紙媒体にはもっともっと頑張ってほしいと思っています。