古書と人生

2021年10月25日

第10回「新聞と戦争・「太平洋戦争と新聞」(前坂俊之)」






現代、情報を発信する媒体は多様化し、従来からあった新聞の他にもWEBの比重の方が高くなってきています。
先日は某新聞社の購読部数が減少していると一部メディアで報じられ、「紙」としての新聞の役割は少なくなってきているとひしひしと感じています。
また SNS の発達もあって、新聞報道を監視し、それを公表する人たちも増えてきています。
新聞やテレビなどを総称して「マスコミ」と呼びますが、その報道内容などから「マスゴミ」と呼ばれている現状もあります。
現代において大きく変化しているマスコミ情勢。
今回ご紹介する「太平洋戦争と新聞」(前坂俊之、講談社学術文庫、2007年)では、太平洋戦争前から太平洋戦争中における新聞の情勢をうまく解説しています。 




自由からの情勢変化

日本におけるいわゆる戦前期の新聞業界は、比較的自由な風潮があったと記憶しています。
しかし、それが新聞紙法の制定などを経て、日本という国が戦争へ突入。
国家総動員へ向けて法律が整えられていく中で新聞をめぐる情勢は変わっていくのです。
新聞は当時(今もそうかもしれませんが)、広く国民に読まれているメディアでした。
新聞の影響によって世論が動く可能性もあり、政府は国を挙げて戦争の雰囲気を作っていきたいと考えていたのではないかと思います。




命がけだった当時の記者

その先に待っていたのは、法律によってがんじがらめになった新聞制作でした。
10数個もある法律を見ながら、一字一句チェックしながら新聞制作を進めなければならず、
当時の新聞記者は相当な苦労がかかっていたのではないかと推察されます。
私はスマホ全盛期の時代に生きていますが、当時もし私が新聞記者をやっていたのであれば、仕事を投げ出したくなるに違いないでしょう。
また当時は軍部の力が強く、少し国に歯向かうようなことを書けば軍部に圧力をかけられるという時代でもありました。
「ペンは剣より強し」という格言がありますが、戦時色が濃くなっていく中で、新聞記者の人たちは命がけで「ペンという武器」を握りながら戦っていたのではないでしょうか。




50-50 のスタンスも必要だ

今の時代は「政権寄り」「反政府」といったように、多様な言論空間が存在しています。
それは自由な言論空間があることを意味し、いいことではあると思います。
ただし、批判だけではいけません。
批判もしつつ、時には評価もする。
それが最近のメディアに求められることなのではないかと思います。
批判ばかりでは読者がそのメディアから離れてしまう可能性もあります。
しっかりとした「メディア」になるには、「0 か 100 か」ではなく「50-50」のスタンスも必要だと思います。




最後に

私は現役の新聞記者で、昔の新聞記事を読むことが好きなのです。
そのため、「太平洋戦争と新聞」を古本屋で購入しました。
なかなかこういった、過去の報道を検証するような本が見当たらず、困っていたところでした。
これから寒くなるので、古本を読みながら家でぬくぬくする日が増えてくる気がします。
私の住む北海道では、もう雪が降りました。
皆さんも体調に気を付けてくださいね。



posted by 小林英介 at 11:00 | Comment(0) | 第1回〜第25回
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