この本、そして野村さんの考え方に触れながら、ものごとの考え方について考えていきましょう。(これは第4回の続きです)
理を持って戦えるか
理とは「考えや知識」を表す言葉です。団体競技などでは、自分が持っている力だけでは太刀打ちできないことがあります。
野村さんは、このような場合に備えてあらかじめ自分の限界を知っておいて、最悪の状況でも打開策を見つけ出すのに役立つと説きます。
そのためには、正確な知識を得てから原則を知るのがベストだといいます。この流れを踏むことによって、理をもって戦えるのです。
たとえ相手がかなわない強敵だったとしても、この原理を踏んでいれば「こっちはどんな状況でも対応できる。すなわち勝てる」となるのです。
精神的な強さは勝負も左右します。理を持って戦うことは、最終的に勝負にも関わってくるのです。
過程を重視せよ
「結果か過程か」。教育現場でもよく言われる言葉の一つです。
結果を重視して過程は「どうでもいい」と切り捨てるのか。
過程を重視して結果をあまり気にしないのか。
「スポーツは結果主義」。野村さんは著書の中でこのように述べています。
プロ野球の成績は、シーズン終了後に集計されるデータを基に算出。最多本塁打(ホームラン王)や最優秀防御率、最多勝など、プロセスより結果が成績として表れる。
でも「結果だけを求めてプレーをすると、それを得られないのが凡人の常。結果主義は、気合が足りない、執念が足りない、などという精神主義を招きがちになる。」といいます。
そのため、野村さんは成功につながるプロセスを重視していました。
「準備野球・実践野球・反省野球」。これは今でいう「PDCA サイクル」につながる考えです。
準備野球では対戦相手との試合や試合展開などを想像するもの。
実践野球は試合でプレーするもの。
反省野球は予想した試合展開や「実際にやってみてどうだったか」を突き合わせるもの。
これを繰り返せば、プロセスがどんどんつながっていき、質の高い野球ができるといいます。
これは仕事にも生かせます。
仕事の準備をしてから仕事に臨み、仕事が終わってから仕事内容の反省をする。
これを繰り返せば、仕事の質は上がり、自分の仕事に対する見方が変わりますし、昇進も近づくかもしれません。
「歴史とは、人間の失敗の蓄積である。」
この言葉を胸に刻みながら、これから生きていけば人生が変わるかも。
野村さんの考えは現代にも通用する
私が抱いていた野村さんの印象は「ぼやいている人」という感じ。
試合が終わった後に、記者団に向かってぼやいている様子が何度も何度もテレビに流れていました。
このようなイメージがあったため、野村さんが「野球論集成」のような考えをもっているとは考えられませんでした。
ボヤキとは裏腹に、しっかりとした理論を持った人だったと思ったことを今でも覚えています。
何回かに分けて「野球論集成」を紹介してきましたが、野村さんの言葉や考え方は現代社会にも応用できます。
人との付き合い方や心の持ちようなど、劇的な現代社会を生き延びる術がこの本には詰まっているのです。
今の状況に行き詰まったら、「野球論集成」を手に取ってみてください。
もしかしたら、打開策を見つけることができるかもしれません。
先人の考えは、色あせることなく応用できるのです。
野村さん、この度は「野球論集成」を紹介させていただき、ありがとうございました。
野球論集成の話はこれで終わりです。
次回、また違う話をしたいと思います。